昔、私が野外活動施設で勤務していた頃、毎月開催する自然体験プログラムを通じて、施設の近所に住む小学4年生のHくんという男の子と仲良くなりました。
自然を相手に仕事をする家族の影響と、自然に対する本人の好奇心の強さが重なって、Hくんは様々な動植物の生態系に精通しており、一緒に山や川へ行ったときには、「末武さん、これなんていう魚か知ってる?」「この花の名前、当ててみて?」といった具合に、いつも私を試してきます。そして、動植物の名前に疎い私が答えられないでいると「末武さんって大人のくせに、なんにも知らへんなぁ」と親しみを込めてバカにされるのが毎回の決まりごとでした。
現在開催しているプログラムでも、自然の魅力を発見することにかけては、子どもたちは素晴らしい能力を発揮します。大人から見てなんの変哲もない植物や石や雲を指さして「見て、これ◯◯そっくり!」「ほんまや!」と互いに大喜びではしゃぎまわる子どもたちの姿を見ていると、自然のなかでは、子どもと大人どちらが教える側で、どちらが教えられる側なのか、まったくわからなくなります。けれど、そういった曖昧で対等な関係性も、自然体験の魅力なのです。